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『野ブタ。をプロデュース』

白岩玄著『野ブタ。をプロデュース』を読む。

野ブタ。をプロデュース

2004年の芥川賞候補作品で、第41回文藝賞受賞作品。

主人公、桐谷修二(高校3年)のクラスに、デブでブサイクでワカメ頭な野ブタこと小谷信太が転校してくる。ある日、野ブタがいじめにあっているところを、うっかり助けてしまい野ブタに弟子にしてくれと頼まれてしまう。面倒なことになったと思いつつも、いろいろ考えた挙句、弟子ではなく野ブタを「プロデュース」して学校の人気者にしてやろうと思いたち、あれやこれやと仕掛けをしていく…。そんなお話。で、これ、結構おもしろいッ!!

とにかく、修二の言葉や考えがいちいち面白い。そして野ブタも、修二の言葉へのリアクションが微妙にずれているところがあったり、指示通り動いたところに小さなミラクルが重なって効果倍増!なんてこともあったりで、笑わずにはいられない鮮明な妄想ができる。

ちょっと達観しすぎかな?という感じもしないでもない修二の発言や考え方も、テンポのいいストーリー展開がうまく消してくれているようしに思えた。情景描写に少しわかりにくい点があったりもしたけれど、周りの環境を想像するのがどうでもよくなるくらい、活き活きとした人物描写に引き込まれていく。とにかく人間を描くのがうまいなぁと感じる。

でも、結末には賛否両論あるかも。個人的には、ありともなしとも言えないなんか複雑な気持ちだけれども、修二の自分自身に対する考えや、周りの人間との付き合い方感みたいのが随所にでてきていたので、もともとの狙いはそういうところにあったのかぁ、という気がしないでもない。

とはいえ、内容、テンポ、勢い(!?)、十分に著者の才能を感じることができるはず。今後に期待の★★★★☆。