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『ノルウェイの森』

村上春樹著『ノルウェイの森』を読む。 誰もが知っている名作をいまさら読む。著者の最新作『アフターダーク』ではちょっともやもやしてしまっただけに、名作と評価されている手堅いものを読んでみたいと思った。 一口に恋愛ものとは言っても著者のものはその他大勢の例愛小説とは違うように感じる。何がその差を生み出しているのかはわからないし、自分が何を根拠にそれらを区別しているかもよくわからない。なんだかわからないけども何かが違うように思える…。それが判ってしまったとき、小説すべてがつまらなくなるような気がするので深く追求したりせずに今回も村上ワールドに没頭すべく読み始める。

主人公ワタナベ(♂)の友人キズキ(♂)は17歳にして自殺、それ以来幼なじみであり恋人の直子は精神的に「普通じゃない」状態を抱えながらも生活してきた。そしてワタナベも「生と死」ということについて深く考え、困惑し、自分に折り合いを付けれないまま大学生活を迎える。その大学生活にも慣れははじめたあるとき、電車の中で偶然直子と再会し、そこから二人の関係が始まる。そしてある日ワタナベは同じ学部の緑という女性と出会い…、というお話。

物語は最初38歳になったワタナベが20年前を思い出し、回顧録として語られ始める。でもラストシーンは現在には戻らず、思い出の中でワタナベがとある決意をしたところで終わってしまう。冒頭の飛行機から降りるところのイメージを強く頭に残してしまったせいか、どうも尻切れ気味で中途半端な感じがしてしまった。

死や哀しみなどが多く語られるため全体的に重い。決して爽やかさはないけれど、読んでいる自分が思いつめてしまうほど重くるいしいものでもない。それは村上春樹作品共通の「身近な現実離れ感」がこの小説にも感じられるからだと思う。それがなんとも言わせない読後感にも繋がっている。本当にどう表現していいかわからない感情というか、なんというか…。

じわ~んとくる、★★★★☆。