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『あなたの石』

関口尚著『あなたの石』を読む。 『プリズムの夏』で小説すばる新人賞受賞した著者の2作目で、いわゆる純愛文学。この手のものは『世界の中心で…』しか読んだことがないけど(はっきりいって面白くなかった)、もう一度トライしてみる。 鉱石の販売店でアルバイトをする主人公・桜井が、以前付き合っていた同じ店のアルバイト学生・彩名との別れを引きずりながらも、客として来店した雪衣と新しい恋愛に向かっていくというお話。

え~、この桜井君。とにかくモテまくります。そして、彼を好きになる女性すべて何かしら訳あり。ついでにお店の社長や他のバイトの人間まで何かしらの事情を抱えつつという状況で、たぶんこの手の恋愛小説の王道なんだろうけど、いちいちその事情を桜井君目線で間接的に説明される点や、それにまつわる出来事の平たい描写にはっきり言ってうんざり、あきれる。まったく感情移入できないままいろんなものが通り過ぎていく感じがする。

そんなあきれる展開でも唯一救いになったのは社長の存在。彼のような深みのある存在が描写されなければ、本当につまらないものになってしまったはず。『世界の中心で…』はまさにそういった存在がいなくて主人公の内省観をひたすら描き続けていたのでなんか薄っぺらい感じがした。

やっぱりこの手の直球恋愛小説は自分には向かんです。 書評を書くかどうかも迷ったけど、まあネタの一つになるし…。

「セカチュー」よりまだましな、★☆☆☆☆。