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『アフターダーク』

村上春樹著『アフターダーク』を読む。 「私たち」という謎の視点が語る、浅井マリという19歳の女性とそれに関係する人物たちのある夜のお話。

「私たち」もさることながらすべての登場人物が何か思わせぶりな態度、発言をするが結局何も解決せず、なにかの結末を迎えることもなくそのまま終わってしまう。浅井マリが体験する出来事から、彼女の成長を各節にあるアナログ時計の時刻の経過とともに感じ取れもするが、それにしても彼女とは出会わない人たちの部分を出来事以上に感じられず、存在感を感じない。

彼女の抱える大きな悩みや不安が高橋という一人の男がきっかけとなり、解決はされないにしても小さな進展をみせる。そして高橋も、この夜のバンドの練習を最後に法律の勉強を始める。「私たち」も含めすべての人物、出来事が何かが始まる前兆をみせて小説は終わる。

「ランドマーク」に続き結末のない小説を続けて読んだ。 何かが始まる前兆が結末とも言えなくもないが、自分が本を読むことで結果や意味を求めすぎてるような気もする。それは本を読むことだけに当てはまることではないけれども。納得のいかないこと、理解できないことを単に拒絶してきただけかもしれない。結果より経過が大事、結果には意味がない、そんなものもある。

何かが始まる★★★☆☆。