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『グラスホッパー』

伊坂幸太郎著『グラスホッパー』を読む。

グラスホッパー

鈴木、蝉、鯨の3人の主人公のザッピング物語。ある一つの事件をきっかけに3人がそれぞれの立場でその事件に絡んでいくというお話。前作「チルドレン」のようなコメディな描写もあり、サスペンスもありで今回もまた一気読み。

著者の処女作「オーデュポンの祈り」に回帰して命や生き方というものについての3人それぞれの考え・行動を主体に書かれている。だた、今回は3人の主人公という視点がはっきりしているせいかよりおもしろい。もちろんあのかかしも登場(ちょっとだけ)。ものすごくダークな鯨、陽気な殺人鬼の蝉という二人の節の間を、まったくの一般人鈴木の節が中和する。ナイスバランス。

そして、あいかわらずの名脇役たち。今回は蝉の上司(?)である岩西に助演男優賞を。ジャック・クリスピンなるミュージシャンの言葉に影響をうけた変なやつだが個人的にはとても好きなタイプ。

帯にもいろいろかかれてるが、今回はいろいろ名言も。「しじみは人より偉い」、「人間はほ乳類というよりはむしろ昆虫に近い」など、なんだか考えさせてくれるものが節々にそれぞれの人物の視点・立場から。

文句なしの★★★★★。